2020-12-22

洋書案内3:The Adventures of a South Pole Pig - 子ぶたが南極でそり引きに挑戦

Adventures of South Pole Pig 表紙

【原題】The Adventures of a South Pole Pig: A novel of snow and courage
【仮題】子ブタのフローラ、南極へ行く
【作者】文:Chris Kurtz 絵:Jennifer Black Reinhardt
【出版社】2015年リプリント版HMH Books for Young Readers(初版 Houghton Mifflin Harcourt)
【刊行時期】2013年2月
【著作権】文:2013年 Chris Kurtz 絵:2013年 Jennifer Black Reinhardt
【ページ数】ペーパーバック278ページ
【ジャンル】児童文学/冒険/動物(対象:10~12歳向け)


作者について

Chris Kurtz

幼い頃より物語が好きで、大きくなったら物語の主人公になり、冒険旅行をするのが夢だった。小説執筆のかたわら小学校を回り、パワーポイントを使って絵と音楽による特別授業を提供している。児童書はこれが4作目。

Jennifer Black Reinhardt


カーネギー・メロン大学でイラストを学んだのち、イラストレーターとして活動している。絵本、カレンダー、カードなど、多方面で活躍中。


*本書の主人公フローラを描く過程を動画で紹介していらっしゃいます。


あらすじ


農場で生まれた子ぶたのフローラは、農場の近くで訓練にはげむ犬ぞり隊を見かけ、自分もあんなふうにそりを引いてみたいとあこがれ、柵の中で練習をつんでいた。そんなある日、フローラはその犬たちと一緒にトラックで運ばれ、南極探検船にのせられる。フローラは自分も探検隊の一員としてそりを引かせてもらえるものと勘ちがいして喜んだ。

だが、乗船してみると、甲板の日当たりのいい場所に檻を与えられた犬たちと違い、フローラは船底の薄暗い場所にロープでつながれた。彼女は食糧として連れてこられたのだ。


航海の途中、フローラは、船内のねずみを退治するために連れてこられた猫のソフィアと協力して、ねずみを一網打尽にしてみんなの注目を浴びる。船が南極大陸にさしかかったときには、船が氷山にぶつかって船体に穴があき、自分もおぼれかけながら、溺れかけてぐったりしていた船長を助ける。


乗員たちは救命ボートで岸にたどり着くが、船とともに食糧も沈んでしまったため、遠く離れた補給基地から急ごしらえのそりで食糧を運んでくることになった。フローラもその一行についていき、途中で力つきた老犬オスカーに代役としてそりを引かせてもらうことになった。フローラはついに念願かない、そりを引いて得意満面で意気揚々と帰ってくる。フローラは船長からも乗員からも感謝され、犬ぞり隊の犬たちからも一目置かれるようになる。


やがて一行は近くを通りかかった船に救助され、港に帰る船の甲板で、フローラはつぎの冒険に思いをはせるのだった。


解説


ドリトル先生のシリーズを思わせる、動物が活躍する楽しい冒険物語。フローラが旅に出た先で何度も災難に遭った末に、ついにはそりを引いてみんなの役に立ち、実力を認めてもらうという、なんということのないストーリーですが、フローラが健気で、一生懸命で、明るくて、友達思いで、意志が強くて、へこたれず、勇気があって、と魅力たっぷりで、読んでいるうちに元気がわいてきます。動物同士のやりとりもいきいきとしていて、船内でのねずみ退治の場面や、自信をなくしてしょげる犬のオスカーをフローラが慰める場面など、随所に山場もあります。


ベーコンにされるはずだったフローラが努力することで運命を変えていく様子からは、諦めないことの大切さを学べます。


線画の挿絵も動物たちが表情豊かで愛らしく、魅了されます。


幼い子供でも夢中で読めそうな話ですが、船やそりの構造など難しい単語が出てくるからか、原書は10~12歳向けとなっています。


すてきな話なので、ぜひ日本でも出版していただけたらと思います。訳稿もあります。