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2021-03-03

洋書案内5:The Secret Lake - 庭にあるトンネルを抜けると、そこは過去だった

The Secret Lake

【原題】The Secret Lake
【仮題】秘密の湖
【作者】Karen Inglis
【出版社】Well Said Press
【刊行時期】2011年
【著作権】著者
【ページ数】ペーパーバック122ページ
【ジャンル】児童文学/タイムトラベル(対象:8-11歳)



作者について

Karen Inglis

2人の息子がまだ幼い頃、子供たちのために物語の創作を始めた。息子たちが成長したあと、2010年に昔書いた物語を出版したのを手始めに、児童書を8点出版。本作は発売部数20万部を超えた。ロンドン在住。

あらすじ

トムは行方不明になった近所の犬ハリーを見つけようと広い庭を捜していて、深い穴を見つける。姉のステラとともに穴をどんどん下りていくと、そのトンネルは過去に通じていた。2人は昔その庭にあった屋敷に住む少女エマや使用人の息子ジャックと仲良くなり、スマホを使ってジャックを窮地から救う。現在に戻ってきたトムとステラは、彼らが暮らす家の大家のおばあさんが、穴の向こうで出会った少女と同一人物だと気づいて驚く。

解説

冒険の楽しさ、トムとステラが過去に戻ったときに仲良くなったエマやジャックとの友情物語、ジャックが泥棒の疑いをかけられた事件を見事に解決するトムとステラの奮闘、エマとハリーの時を超えた愛情物語がどれも面白くて、楽しくすいすい読めました。いくつか矛盾点はありますが、話がコンパクトにまとまっており、テンポよく進むので、ほとんど気になりません。フィリッパ・ピアス作『トムは真夜中の庭で』の現代版。

2020-12-22

洋書案内3:The Adventures of a South Pole Pig - 子ぶたが南極でそり引きに挑戦

Adventures of South Pole Pig 表紙

【原題】The Adventures of a South Pole Pig: A novel of snow and courage
【仮題】子ブタのフローラ、南極へ行く
【作者】文:Chris Kurtz 絵:Jennifer Black Reinhardt
【出版社】2015年リプリント版HMH Books for Young Readers(初版 Houghton Mifflin Harcourt)
【刊行時期】2013年2月
【著作権】文:2013年 Chris Kurtz 絵:2013年 Jennifer Black Reinhardt
【ページ数】ペーパーバック278ページ
【ジャンル】児童文学/冒険/動物(対象:10~12歳向け)


作者について

Chris Kurtz

幼い頃より物語が好きで、大きくなったら物語の主人公になり、冒険旅行をするのが夢だった。小説執筆のかたわら小学校を回り、パワーポイントを使って絵と音楽による特別授業を提供している。児童書はこれが4作目。

Jennifer Black Reinhardt


カーネギー・メロン大学でイラストを学んだのち、イラストレーターとして活動している。絵本、カレンダー、カードなど、多方面で活躍中。


*本書の主人公フローラを描く過程を動画で紹介していらっしゃいます。


あらすじ


農場で生まれた子ぶたのフローラは、農場の近くで訓練にはげむ犬ぞり隊を見かけ、自分もあんなふうにそりを引いてみたいとあこがれ、柵の中で練習をつんでいた。そんなある日、フローラはその犬たちと一緒にトラックで運ばれ、南極探検船にのせられる。フローラは自分も探検隊の一員としてそりを引かせてもらえるものと勘ちがいして喜んだ。

だが、乗船してみると、甲板の日当たりのいい場所に檻を与えられた犬たちと違い、フローラは船底の薄暗い場所にロープでつながれた。彼女は食糧として連れてこられたのだ。


航海の途中、フローラは、船内のねずみを退治するために連れてこられた猫のソフィアと協力して、ねずみを一網打尽にしてみんなの注目を浴びる。船が南極大陸にさしかかったときには、船が氷山にぶつかって船体に穴があき、自分もおぼれかけながら、溺れかけてぐったりしていた船長を助ける。


乗員たちは救命ボートで岸にたどり着くが、船とともに食糧も沈んでしまったため、遠く離れた補給基地から急ごしらえのそりで食糧を運んでくることになった。フローラもその一行についていき、途中で力つきた老犬オスカーに代役としてそりを引かせてもらうことになった。フローラはついに念願かない、そりを引いて得意満面で意気揚々と帰ってくる。フローラは船長からも乗員からも感謝され、犬ぞり隊の犬たちからも一目置かれるようになる。


やがて一行は近くを通りかかった船に救助され、港に帰る船の甲板で、フローラはつぎの冒険に思いをはせるのだった。


解説


ドリトル先生のシリーズを思わせる、動物が活躍する楽しい冒険物語。フローラが旅に出た先で何度も災難に遭った末に、ついにはそりを引いてみんなの役に立ち、実力を認めてもらうという、なんということのないストーリーですが、フローラが健気で、一生懸命で、明るくて、友達思いで、意志が強くて、へこたれず、勇気があって、と魅力たっぷりで、読んでいるうちに元気がわいてきます。動物同士のやりとりもいきいきとしていて、船内でのねずみ退治の場面や、自信をなくしてしょげる犬のオスカーをフローラが慰める場面など、随所に山場もあります。


ベーコンにされるはずだったフローラが努力することで運命を変えていく様子からは、諦めないことの大切さを学べます。


線画の挿絵も動物たちが表情豊かで愛らしく、魅了されます。


幼い子供でも夢中で読めそうな話ですが、船やそりの構造など難しい単語が出てくるからか、原書は10~12歳向けとなっています。


すてきな話なので、ぜひ日本でも出版していただけたらと思います。訳稿もあります。

2020-10-14

洋書案内2:Peak - 少年クライマー、エヴェレストを目指す

Peak表紙

【原題】Peak (A Peak Marcello Adventure)
【仮題】少年クライマー、ピーク・マルチェロ
【作者】Roland Smith
【出版社】Houghton Mifflin Harcourt
【刊行時期】2007
【著作権】作者
【ページ数】ハードカバー256ページ
【ジャンル】児童文学/山(対象:中学生以上





作者について


Roland Smith

1951年生まれ。YA作家。少年クライマー、ピーク・マルチェロを主人公とするシリーズのほか、冒険もの、動物ものなど、作品多数。各種団体が主催する賞をいくつも受賞している。最初に勤めた職場がオレゴン動物園で、生物学者として20年以上、野生生物の救出と保護に携わってきた。邦訳書に『サーティーナイン・クルーズ 砂漠の果て』(角川書店)がある。オレゴン州ポートランドの農場で暮らしている。


作品について


Peak2008年、ニューヨーク公共図書館のティーン向け図書に選出されたほか、各種団体の推薦図書に選ばれた。


あらすじ


ピークの両親はともにクライマーだったが、父はピークが生まれてからも登山に夢中で家庭を顧みず、両親は離婚、やがて母は再婚し、妹も生まれた。しかしピークは父への思いを断ち切れず、遠くで暮らす父にたびたび手紙を書くのだが、返事は来ない。寂しさを抱えながら、父のような一流登山家を目指して、日々練習に励んでいた。


ピークは14歳のとき、マンハッタンの高層ビルの壁を無断でよじのぼり、不法侵入で現行犯逮捕される。そして、国外に逃れるか、未成年向けの矯正施設で一定期間過ごすかの選択を迫られる。


ピークの母は、タイで登山者向けの旅行会社を営んでいる元夫を頼り、彼に息子を預ける手はずを整える。ピークはタイを訪れ、久しぶりの父との再会を喜ぶ。だがそれも束の間、父は、エヴェレスト最年少登頂にピークを挑戦させるという、無謀な計画を用意していた。


ピークはエヴェレストの麓で訓練を積み、いよいよ頂上を目指す。だが、記録達成よりも大切なものがあると気づき、最年少登頂の栄誉を、登山をサポートしてくれた同い年のシェルパの少年に譲る。


解説


前出のThe Trailに作者が賛辞を寄せていたので、興味が湧いて読んでみました。構成がしっかりしており、テンポがよくて、ストーリー展開がなめらか。つねに死と隣り合わせのエヴェレストで限界に挑戦するピークに同化して、一気に読みました。ピークの父に対するわだかまりはずっと消えないものの、なんとか折り合いをつけつつ頂上に挑み、最後には自分の身を案じてくれる新しい家族の大切さに気づいたところで結末を迎え、読後、暖かい余韻が残ります。エヴェレスト登山で寒い思いをしたあとだけに、その暖かさが心に沁みわたります。ピークの妹たち(双子)が、脇役ながら最高にかわいくて、新しい家庭でのピークの心の拠り所となっているのがすてきです。



 

2020-10-08

洋書案内1:The Trail - 歩くことで悲しみを乗り越える

The Trail by Meika Hashimoto

【原題】The Trail
【仮題】アパラチアの山で見つけた宝物
【作者】Meika Hashimoto
【出版社】Scholastic Press
【刊行時期】2017年8月
【著作権】作者
【ページ数】ハードカバー229頁
【ジャンル】児童文学/山(対象:小学校高学年以上)





作者について

Meika Hashimoto
児童文学作家。メイン州の山中で育つ。ハイキング、登山が好きで、世界中の森や山を歩いてきた。現在はニューヨークで児童書の編集をしている。Scaredy MonsterThe Magic Cake ShopA Tale of Two Gardens、『トイ・ストーリー』シリーズ、『バービー』シリーズなどの著作がある。2020年10月に新刊Kitty and Dragon (Volume 1) が出る。

あらすじ

12歳の少年トビーは夏休みにアメリカ東部のアパラチア山中を縦断するトレイルをひとりで歩くことにした。ほんとうは前年の夏、友達のルーカスと一緒にその道を歩くはずだった。ところが、旅の直前にルーカスは事故に遭い、帰らぬ人となってしまった。両親が離婚したあと、ヴァーモント州に住む祖母の家に預けられたトビーにとって、ルーカスとの友情はかけがえのない大切なもので、友を失った悲しみは大きかった。トビーはルーカスと決めたゴールまで440マイルの道のりを歩き切り、2人の夏休みの計画をなんとしても達成したかった。

旅の途中、トビーは体力の限界や悪天候、険しい山道にくじけそうになりながらも、親切な人たちに助けられ、新しい親友となる犬のムーズとも出会って、友を失った悲しみから少しずつ立ち直っていく。

解説

こちらは昨年出版社にレジュメを持ち込んだものの、あえなく敗退した作品です。アパラチアン・トレイルについて調べていたときにこの本と出会いました。作者はメイン州のシイタケ・ファームで育ったそうで、日系のお名前に惹かれて読み始めましたが、作中、登場人物の人種に関する言及は特にありません。

大自然の中を何日も歩き続け、さまざまな困難と向き合うことで、悲しみから立ち直り、成長していく少年の物語は希望を与えてくれ、勇気が湧きます。私自身、歩くことが大好きで、大自然の中を歩くという行為には、悩みごとや悲しいことを忘れさせてくれる効用があると実感しています。


ブログに掲載するにあたって作品について改めて調べたところ、映画化の予定があることがわかりました。2019年の『Variety』誌の記事(英語)に詳細が出ています。その後、世の中の状況が大きく変わったので、順調に進んでいるかどうかは、今のところ不明です。


詳細なレジュメあります。