2020-10-14

洋書案内2:Peak - 少年クライマー、エヴェレストを目指す

Peak表紙

【原題】Peak (A Peak Marcello Adventure)
【仮題】少年クライマー、ピーク・マルチェロ
【作者】Roland Smith
【出版社】Houghton Mifflin Harcourt
【刊行時期】2007
【著作権】作者
【ページ数】ハードカバー256ページ
【ジャンル】児童文学/山(対象:中学生以上





作者について


Roland Smith

1951年生まれ。YA作家。少年クライマー、ピーク・マルチェロを主人公とするシリーズのほか、冒険もの、動物ものなど、作品多数。各種団体が主催する賞をいくつも受賞している。最初に勤めた職場がオレゴン動物園で、生物学者として20年以上、野生生物の救出と保護に携わってきた。邦訳書に『サーティーナイン・クルーズ 砂漠の果て』(角川書店)がある。オレゴン州ポートランドの農場で暮らしている。


作品について


Peak2008年、ニューヨーク公共図書館のティーン向け図書に選出されたほか、各種団体の推薦図書に選ばれた。


あらすじ


ピークの両親はともにクライマーだったが、父はピークが生まれてからも登山に夢中で家庭を顧みず、両親は離婚、やがて母は再婚し、妹も生まれた。しかしピークは父への思いを断ち切れず、遠くで暮らす父にたびたび手紙を書くのだが、返事は来ない。寂しさを抱えながら、父のような一流登山家を目指して、日々練習に励んでいた。


ピークは14歳のとき、マンハッタンの高層ビルの壁を無断でよじのぼり、不法侵入で現行犯逮捕される。そして、国外に逃れるか、未成年向けの矯正施設で一定期間過ごすかの選択を迫られる。


ピークの母は、タイで登山者向けの旅行会社を営んでいる元夫を頼り、彼に息子を預ける手はずを整える。ピークはタイを訪れ、久しぶりの父との再会を喜ぶ。だがそれも束の間、父は、エヴェレスト最年少登頂にピークを挑戦させるという、無謀な計画を用意していた。


ピークはエヴェレストの麓で訓練を積み、いよいよ頂上を目指す。だが、記録達成よりも大切なものがあると気づき、最年少登頂の栄誉を、登山をサポートしてくれた同い年のシェルパの少年に譲る。


解説


前出のThe Trailに作者が賛辞を寄せていたので、興味が湧いて読んでみました。構成がしっかりしており、テンポがよくて、ストーリー展開がなめらか。つねに死と隣り合わせのエヴェレストで限界に挑戦するピークに同化して、一気に読みました。ピークの父に対するわだかまりはずっと消えないものの、なんとか折り合いをつけつつ頂上に挑み、最後には自分の身を案じてくれる新しい家族の大切さに気づいたところで結末を迎え、読後、暖かい余韻が残ります。エヴェレスト登山で寒い思いをしたあとだけに、その暖かさが心に沁みわたります。ピークの妹たち(双子)が、脇役ながら最高にかわいくて、新しい家庭でのピークの心の拠り所となっているのがすてきです。