家のテレビがまだ白黒だった小学生の頃、祖父母の住む母屋で、ときどきカラーテレビを見せてもらっていました。
当時、NHKで海外の歌手やバンドが出演する歌番組があり、鳥飼玖美子さんが通訳として出演されていました。「世界の音楽」という番組だったと、ネットで調べてわかりました。
その番組を見ている最中に、祖母が「なおちゃんもあの人みたいにおばあちゃんに通訳してくれるようになったらええなあ」と言ったのです。将来何になりたいかなど、その頃はまだ考えていませんでしたが、その言葉はずっと心に残っています。
もうひとつ、小学校低学年の頃に母が英語のアルファベットを教えてくれて、まだたいして漢字も書けないうちから、筆記体の練習などしていた記憶があります。
こうして自然に英語に触れているうちに興味を持つようになり、小学4年生の4月に、誰に勧められたわけでもなくNHKラジオの「基礎英語」を聞き始め、翌年も続けて「続・基礎英語」を聞いていました。基礎英語は北村宗彬先生、続・基礎英語が安田一郎先生の頃です。「続・基礎英語」は少し難しくて途中で行き詰まり、1年後にもう一度最初から聞き直しました。基礎英語って、なんと1926年に始まった長寿番組なんですね。
その後、東後勝明先生の「ラジオ英会話」も途切れ途切れにしばらく聞いていました。マーシャ・クラカワーさんとヴァレリー・ケインさんはよく覚えています。カリフォルニア出身のヴァレリーさんの軽いノリと耳触りの滑らかな英語が好きだったので、私の話す英語はたぶん少しカリフォルニア訛りなんじゃないかと思います。
中学で英語の授業が始まると授業が楽しくて、予習・復習は欠かしませんでした。その頃から洋楽にもはまりました。カーペンターズやジョン・デンバーといった、比較的穏やかな路線で、はじめて親に買ってもらった2枚のレコードのうちの1枚はカーペンターズでした。カレン・カーペンターもジョン・デンバーも若いうちに亡くなって、悲しかったですが、ふたりの歌声は今も大好きで、曲を聞くとあの頃を思い出します。ほかにも英語塾に通わせてもらったり、海外のペンフレンドと文通したり(メールもない時代で、文通が流行っていました)、英語にかける時間がだんだん長くなっていきます。
高校に入って翻訳という職業を意識したことをきっかけに、あとは英語街道まっしぐらで、ここまで来ました。昔、祖母に言われたことがずっと頭の片隅にあって、二十代の頃に一度、通訳の教室に通ったこともありますが、頭の回転が通訳向きではないと気づいて、早々に断念しました。
ずいぶん前に、占い師さんに前世は遣隋使だったと言われたことがあるのですが、そのときも通訳や翻訳をしていたのかもしれません。