出版社やエージェントから原書読みを依頼されて書いたレジュメの数に比べれば、自分で原書を探してレジュメを書き、出版社に持ち込むところまでたどり着いた回数は数えるほど、おまけに持ち込んだ企画が通ったことはまだありません。経験不足故、持込に関して私に語れることはたいしてありません。代わりに経験豊富な先輩方に伺ったり、読んだりした内容をまとめると、一度断られたくらいで諦めたりせず、しぶとく粘って興味を持ってくださるところが見つかるまで何度でも挑戦するのが成功の秘訣のようです。企画のストックが何本もあるとおっしゃる先生もいらっしゃいました。仕事をひとつ確保するために繰り返し売り込むなんて大変だ。でもそれしか方法がないなら、やるしかありません。以前は、二度断られて理由が納得できるものなら、あっさり諦めていましたが、先輩方の経験談を伺って以来、関連資料は捨てずにとっておくようにしています。そういえば2社に断られて諦めた本が別の出版社から出たこともありましたっけ。翻訳者としてかかわれなかったのは悔しいですが、無事邦訳が出て、好評なのが救いです。幸運な出会いがいつどこで待ち構えているかわかりませんから、希望を捨ててはいけませんね。
私など、年齢的には高齢者の仲間入りをしていても、出版翻訳の世界ではまだまだ経験が浅く、当のジャンルを担当されている編集者のお名前を問い合わせ、レジュメをお送りするのがやっと。送り先が以前からお付き合いのある方だったり、優しい方だったりすれば、企画が通らなかった理由を添えてお返事をくださるので、では別の出版社に、と前に進めるのですが、超多忙な編集者がお返事をくださることは稀で、レジュメを送っても梨のつぶてということも多く、お忙しいのにたびたびお邪魔をするのも気が引けて、企画を気に入っていただけたかどうか問い合わせるだけの勇気を振り絞るのに時間がかかり、いつの間にか長い月日が経過していたことも。
ですが、何もせずに何カ月も待ち続けるのは考えものだと気づきました。一度、こんなことがありました。レジュメをお送りしたあとで、たまたまご本人にお会いする機会があり、「社内に興味を持っている者がいる」と伺ったので、大いに期待してまだかまだかと返事を待っていたら、いつの間にか別の出版社から邦訳が出ていたのです。このときはさすがにがっくりきたので、その後は1、2カ月待ってお返事がない場合は「いったん取り下げます」とお伝えすることにしています。すぐにお返事がないということは、1)企画にご興味がないか、2)お忙しすぎてまだ目を通していただいていないか、3)忘れられたかでしょうから、3)の場合に備え、さりげない催促もかねてご連絡することにしました。せっかく書いたレジュメを無駄にしないためには、今のところこれが最善の策じゃないかと思います。
と書いてはみたものの、失敗が続いたせいか、年のせいか、ひところほど原書探しに身が入らなくていけません。以前はずいぶん厚いノンフィクションのレジュメを書くほど燃えていたのに。原書の探し方も含めて、いろいろと見直しが必要なのかもしれません。