2020-08-31

健康のためにヨガを

音読のほかにもうひとつ、日課にしていることがあります。

簡単自己流ヨガです。


ヨガの効用について知ったのは、以前訳した心身の健康に関する本(『心のパワーで体を癒す』)でした。その仕事が終わったあとで効果のほどを実際に試してみようと思い、市が体育館で開いていたヨガ教室に参加してみたのですが、教室のあとは毎回、気持ちがリラックスして体が軽くなり、頭もすっきりすることに気がつきました。続けるうちに体調もよくなっていました。何より驚いたのは、趣味のハイキングに行ったあと、以前ほど疲れなくなっていたことです。子供の頃から体力がなく、運動にはとんと縁がありませんでしたが、そんな私でもヨガは無理なく続けられたし、山歩きもますます楽しくなってきて、時間ができると歩きに行くようになり、体力と持久力がついてきました。


市のヨガ教室でも十分な効果を感じましたが、生徒が大人数だったので、ひとりずつ丁寧に見ていただく時間はありません。それで少し物足りなくなり、少人数制の教室を探して、丁寧に見てくださる先生と出会いました。長年本格的にヨガを学んでおられる素晴らしい先生でした。


子供の頃、病気がちでしょっちゅうお医者に連れていかれたせいか、薬嫌いになり、体が本来備えている自然治癒力や回復力といったものに興味を持つようになったのですが、ヨガを続けるうち自分が健康になっていくのを体感できて、それが何よりうれしく、続けるモチベーションになりました。できれば長く続けたかったのですが、その後、先生が教室を開設され、そこが少し通いづらい場所だったため足が遠のいてしまい、それきりレッスンを再開するきっかけを見つけられずにいます。


教室に2、3年ほど通って、簡単なポーズだけは覚えたので、今も自己流で毎日15分ずつ続けています。月に2、3度、1時間半、指導を受けていたときは、緩やかなポーズから負荷のかかるポーズへ、そしてまた緩やかなポーズに戻って最後に瞑想するという一連の流れをこなすことで、終わったあとの爽快感が素晴らしく、自己流ヨガではその域にはなかなかたどり着けませんが、しばらく休むとてきめんに調子が悪くなるので、もはややめられない習慣となりました。ヨガの効用を教えてくれた本はあいにくすでに絶版ですが、ヨガと出会うきっかけを作ってくれたことを、今でも感謝しています。指導してくださった先生方にも、もちろん感謝しています


本は中古でしか入手できませんが、この本の著者である精神科医のリック・リーヴィ先生は下記のサイトで催眠と瞑想のガイダンス音声を無料で公開しているので、英語のわかる方は試してみてください。ただし、途中で眠ってしまうといけないので、車の運転中など、危険を伴う作業中は聴かないようにお気をつけください。


The Levy Centers for Mind-Body Medicine and Human Potential

2020-08-28

タイトルは、そのまま訳しただけでは伝わりにくい

家にいる時間が増えたので、テレビの前にいる時間がつい長くなります。NHK BSで放映される名画を録画しては、週末に観るのが楽しみのひとつとなりました。

先日は『遙か群衆を離れて』というイギリス映画を観ました。原作はトマス・ハーディの小説。この作家の小説はいくつも映画化されています。


『遙か群衆を離れて』って、あまりぴんとこないタイトルだ、内容を表しているようには思えないけど、どういう意味だろうと気になって調べたら、原題のFar from the Madding Crowdは詩の一節なんですね。トマス・グレイという詩人の傑作 Elegy Written in a Country Churchyard からとったものだと、ウィキペディアに書いてありました。かなり有名な詩のようですが、知りませんでした。


映画のタイトルに使われた一節の入った連はこんな感じ。


Far from the madding crowd's ignoble strife, 

         Their sober wishes never learn'd to stray; 

Along the cool sequester'd vale of life 

         They kept the noiseless tenor of their way. 


詩の全文はこちら、長いです。私の英語力では、流し読みしただけでは意味がとれません。


岩波文庫から翻訳が出ていました。

『墓畔の哀歌』(トマス・グレイ、福原麟太郎訳)


名も無き農夫たちの墓に寄せた詩。それなら映画の内容とつながります。この詩を誰もが知っていて、Far from the Madding Crowdという一節を見て、詩全体の内容が浮かぶ、という状況だからこそのタイトルのようです。邦訳が見つかったら、詩をじっくりと読んでみることにします。


映画に限らず邦題をつけるのは難しい。

2020-08-26

ワインのガイドブックの下訳

今から二十数年前にワインのガイドブックの下訳をしたことがあります。その頃、私にとってワインは少し改まった機会にレストランで食事をするときに飲む、ちょっときどった飲み物でしかなく、詳しくはありませんでした。それでもほかのお酒より好きだったので、そのお仕事を受注して、とてもうれしかったことを覚えています。ワイン関連の翻訳がどれほど大変か、そのときはまだよくわかっていませんでした。

それは世界のワインとワイナリーを紹介する本で、英語以外にフランス語、イタリア語、スペイン語、ポルトガル語、ドイツ語だけでなく、ギリシャ語やハンガリー語といった、なじみがなく、スペルを見ても発音を推測できない固有名詞が出てきて、調べ物の山。ネットの情報は今ほど充実していなかったし、資料はあれこれ集めましたが、それだけでは全然追いつかず、締切までになんとか仕上げたものの、かなり不本意な出来でした。あとでチェックをしてくださった方にもずいぶんご迷惑をおかけしたに違いありません。

その本に出ていたお値打ちワインを買ってきて、家でひとり飲みして悪酔いしたこともありました。今だったらもう少しまともに訳せたはずと思えるくらいには、あれから本を読み、お手頃ワインを中心に、いろんな国のいろんな銘柄を飲んできました。カリフォルニアに旅行したときは、ワイナリーツアーに参加して、はじめてワインの製造工程やセラーを見学したのですが、そのとき知り合った台湾人の女性は、カリフォルニアの大学で醸造学を学んでいる学生さんでした。


その後、国産ワインもずいぶん生産者が増え、旅行先でワイナリーに立ち寄る楽しみができました。日本のワイン醸造発祥の地である勝沼のほか、これまでに伊豆、塩尻、松本、安曇野、東御、小布施、足利、新潟、花巻、紫波、余市などのワイナリーを訪ねました。なかでも勝沼にはワイナリーがたくさんあり、1日で何カ所も回って試飲を楽しめるので、秋はとても賑わっています。

大変な仕事だっただけによく覚えているし、あの経験をきっかけにますますワインが好きになり、世界も広がりました。たいして量は飲めませんが、今も週末はたいてい赤ワインを楽しんでいます。今は気軽に旅行もできず、ワイナリー巡りができる日が戻ってくるのを心待ちにしています。ワインの専門書を訳す機会はもうないでしょうが、小道具にワインの出てくる小説はいつか訳してみたいです。


勝沼のメルシャン・ワイン資料館



2020-08-23

お世話になった機械たち

これまで私の仕事を支えてくれた相棒たちです。

シャープ書院

富士通オアシス

Apple SE30

Apple LC630

Apple Power Mac 7200

Apple iMac Graphite

Apple iBook

Apple MacBook

Mac mini

Mac mini (M1, 2020) 


富士通オアシスはアメリカ留学時に持っていき、帰国するときは在学中に学生から安く譲り受けたSE30を船便で送って日本でもしばらく使っていました。以来27年、Macと苦楽をともにしてきました。


2012年に買ったMac Miniは現役でがんばってくれています。今のところ快調です。ディスプレイはMITSUBISHIで、こちらも快調。昔は眼精疲労によるひどい頭痛と吐き気で年に1、2度、寝込んだものですが、そういうこともめったになくなりました。


原書リーディングの報酬について思うこと

しばらく前に、原書のリーディングの料金についてツイッターで話題になっていました。ざっと要約すると、リーディングの仕事は大変で時間がかかるので、報酬が安すぎるのは問題だという内容でした。何人かの方からいろんな状況のご報告がありましたが、おおざっぱにまとめてしまってすみません。

はじめてリーディングの仕事を受けたのは25年ほど前、それからしばらく、リーディングの仕事は翻訳エージェントや編集プロダクション、翻訳学校などを経由しており、報酬は5000円から1万円程度。予定していた支払いがないことはたまにあったし、レジュメを書いても、翻訳の仕事が回ってくることはまずありませんでした

10年ほど前に出版社や版権エージェントからこの仕事を受けるようになってようやく、人並みの報酬をいただくようになりました。なので、かなり長い期間、低めの料金で仕事を受けていたことになります。たまに2、3日で読めてしまう本もありますが、300ページを超える原書を1冊読んであらすじをまとめるのにたいてい2週間以上かかるので、さすがに5000円は割に合わないと今は思います。

ただ、報酬の相場が上がると、リーディングを経ずに邦訳出版を検討する事例が増えはしないかといらぬ心配をしてしまいます。ずいぶん前に本の翻訳が終わったあとで出版が取りやめになり、原稿がお蔵入りという事故を2度経験したのですが、いずれの場合もリーディングの工程を省かれて、翻訳原稿を読んでみたら思っていた内容と違ったというのが原因のようでした。

こうなることを防ぐためにも、リーディングは省かないでいただきたいものです。

リーディングに関してはむしろフィードバックがほとんどないことが残念です。長い時間をかけて書いた文章に、何かひと言でも感想をいただければ、レジュメを書く際の参考になるし、つぎのご依頼もお受けしようという気になります。

数えるほどしか訳書のない私のような翻訳者が意見を述べるのはおこがましいですが、リーディングはそれなりに数をこなしてきたので、思ったことを書いてみました。お蔵入りの件については書いてよいものか迷いましたが、どちらもすでに時間がたっており、関係者にご迷惑がかかることもないだろうと判断しました。この手の事故を避けるために、参考にしていただければさいわいです。

2020-08-22

しあわせな老後のために:読書椅子を買いました

外出が不自由な生活は当分終わらないだろうと思い、思いきって念願の読書椅子を買いました。

村上春樹さんが、しあわせな読書生活を送るためには座り心地のよい読書椅子が必要(うろ覚え)というようなことをどこかに書かれていたのを読んで以来、ずっと探し続けてきたのですが、これぞという椅子がなかなか見つからず、決めるまでにはずいぶん時間がかかりました。


アメリカに留学していたとき、図書館にいろんなタイプの読書椅子があって、ボックス型のアームチェアがとても快適でした。あれと似た椅子がないかと家具店を何軒も回ったのですが、カフェやホテルのロビーではよく見かけるそのタイプの椅子を扱っている家具店に、なぜかなかなか巡り会えません。いいなと思うと、輸入品で目の飛び出るようなお値段だったり。


日本の一人掛けソファにはリクライニング機能がついているものが多いようですが、テレビの前でのんびりくつろぐのならともかく、読書椅子は背もたれや座面があまり傾斜していると、体の一定の場所に負担がかかりすぎる気がします。


それから、肘掛けは立ち上がるときに体を支えるためではなく、ちゃんと肘を置けるデザインが好み。重たい本を持った腕を支えるのに、肘掛けが低くて細いと不便です。


でも、今買わなければもう一生、読書椅子は買わないような気がして、お気に入りの家具店で思いきって決めました。手に入れた椅子も100%希望どおりではないので、あとは体のほうを慣らしていくことにします。届いて1カ月、だんだんなじんできました。今まで家で本を読むときは仕事机かベッドだったので、読書のためのちゃんとした場所ができたのがうれしい。日本製のしっかりとした椅子で、長く使えそう。これでこの先、仕事がなくなってもうろたえることはありません。楽しい積み本崩しの日々が待っている


読書家の方たちがどんな椅子で、どんなふうに読書しているのか、読書家の本棚以上に興味が湧きます。


2020-08-21

音読のすすめ

毎日朝一番にしていること、静かめの音楽(3年前からほぼ毎朝同じCD)をかけて短い日記を書いたあと、本を音読します。そうすると、ぼーっとしている頭に少しずつ血が巡ってきます。今読んでいるのは串田孫一『若き日の山』(山と渓谷社)。エッセイが多いですが、小説も読みます。岩波文庫の日本児童文学名作集(上)に入っている巌谷小波の『こがね丸』なんか、リズムがよくて勢いがあるし、夏目漱石の『吾輩は猫である』や『坊っちゃん』も声に出して読むのが楽しかったです。

音読を始めたのは10年ほど前、毎朝の習慣にするようになってほぼ5年。思いがけない恩恵として、翻訳をしているときなど、頭の奧に埋もれていてなかなか出てこない日本語の単語が、以前よりだいぶすんなり出てくるようになりました。忙しいときはこの日課を省くこともありますが、もはややめられない習慣となりました。