2020-08-28

タイトルは、そのまま訳しただけでは伝わりにくい

家にいる時間が増えたので、テレビの前にいる時間がつい長くなります。NHK BSで放映される名画を録画しては、週末に観るのが楽しみのひとつとなりました。

先日は『遙か群衆を離れて』というイギリス映画を観ました。原作はトマス・ハーディの小説。この作家の小説はいくつも映画化されています。


『遙か群衆を離れて』って、あまりぴんとこないタイトルだ、内容を表しているようには思えないけど、どういう意味だろうと気になって調べたら、原題のFar from the Madding Crowdは詩の一節なんですね。トマス・グレイという詩人の傑作 Elegy Written in a Country Churchyard からとったものだと、ウィキペディアに書いてありました。かなり有名な詩のようですが、知りませんでした。


映画のタイトルに使われた一節の入った連はこんな感じ。


Far from the madding crowd's ignoble strife, 

         Their sober wishes never learn'd to stray; 

Along the cool sequester'd vale of life 

         They kept the noiseless tenor of their way. 


詩の全文はこちら、長いです。私の英語力では、流し読みしただけでは意味がとれません。


岩波文庫から翻訳が出ていました。

『墓畔の哀歌』(トマス・グレイ、福原麟太郎訳)


名も無き農夫たちの墓に寄せた詩。それなら映画の内容とつながります。この詩を誰もが知っていて、Far from the Madding Crowdという一節を見て、詩全体の内容が浮かぶ、という状況だからこそのタイトルのようです。邦訳が見つかったら、詩をじっくりと読んでみることにします。


映画に限らず邦題をつけるのは難しい。